土の中の微生物が植生遷移の原動力!

植生遷移

富士山の噴火した後にはたくさんの火山噴出物が堆積し、何も植物の無い荒原ができました。長い年月の間に徐々に植物が定着し、もともとあったような森林に戻ろうとしています。いまは限られた先駆植物がまばらに定着した状態ですが、少しずつ新しい樹木が定着しながら、植生遷移が進行しています。

この富士山火山荒原に最初に定着する木本樹木はミヤマヤナギ。

地をはうようなヤナギですが、攪乱に強く、徐々に広がっています。

きのこ

ミヤマヤナギもキノコと共生して生きている樹木です。もちろん富士山火山荒原に定着しているミヤマヤナギの細根にも、例外無くキノコが共生して菌根を作っています。だから、雨が降った後にミヤマヤナギの下を見てみると、たくさんのキノコが発生します。食べられるのは少ないですが....。でも、木にとっては大切なパートナー!

ミヤマヤナギの成長

ミヤマヤナギも菌根菌が共生しないと、土壌養分をうまく吸収できないため、ほとんど成長しません(左図の一番左上)。菌根菌を接種してやると成長するようになりますが、その効果は菌種によっても違います。

ミヤマヤナギの定着

富士山火山荒原でミヤマヤナギの実生が定着している場所を調べてみると、ミヤマヤナギの成木の近くでしか見られないことが分かりました。

成木には菌根菌が既に共生しているので、その周りには実生に感染できる菌根菌が必ずいます。この火山荒原で、菌根菌がいる場所はわずか1%。そのわずかな場所でしかミヤマヤナギの実生は定着できないのです。 

キノコが植生遷移を決める!

この火山荒原でわずか1%しかない菌根菌のいる場所は、

他の樹木の定着にとっても大切な場所。

実際に、初期の森林を形成するカラマツやダケカンバが最初に定着できるのは、

この1%の場所だけなのです。ミヤマヤナギに共生している菌根菌が、

カラマツやダケカンバにも共生し、その定着を助けるのです。

土の中に隠れた菌根菌(キノコ)の菌糸が植生遷移をつないでいるなんて驚きですね。

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