絶滅危惧樹木の保全: 菌根菌が鍵をにぎる!?(ヤクタネゴヨウ編)

ヤクタネゴヨウは日本の屋久島と種子島にしか生息しない固有種です。しかし現在は約3000本まで個体数が減少して、IUCNや環境省によって絶滅危惧種に指定されています。NPOや林野庁が中心となって保全活動が活発に行われています。

ヤクタネゴヨウも菌根菌に養分吸収を依存してるのでどんな種が共生しているのか、残った生息地のほぼ全域で調べてみました。トガサワラの時と同じように、ヤクタネゴヨウに特異的に見られる新種が見つかったのです!しかも埋土胞子で最も優占。トガサワラの時とは違って成木の根にも見られたので、その子実体(きのこ)も見つかるかもと思って探してみると。。 

やはりありました!新種ショウロの子実体!

学名はRhizopogon yakushimensisにして新種発表しました(詳しくはSugiyama et al. 2017 Mycoscience)。和名は少しベタですが...「ヤクタネショウロ」

発見したヤクタネショウロもヤクタネゴヨウの成長や生存に大事な働きをしています。写真の上半分はヤクタネショウロの感染苗、下半分は非感染苗。1年経って成長もかなり違っていたのですが、植え替えに対する抵抗性の違いは歴然。。。感染苗は全部生き残って、非感染苗は全部枯死。絶滅危惧樹木のヤクタネゴヨウを保全していくために、発見したヤクタネショウロを活用できる可能性は高いでしょう。

(詳しくはMurata et al. 2018 PLOS One)

絶滅危惧種に指定されているマツは世界中にたくさんあります。東南アジアにもIUCNの危惧種に指定されているマツがあり、調べてみるとやはりショウロ属の新種が見つかりました。一般にショウロ属は宿主特異性の高い菌で特に撹乱後の実生定着に最も重要な菌として知られています。絶滅危惧種に特異的なショウロ属菌が共生していて、大事な役割を果たしているのが普遍的な真実なのであれば、それを見つけて活用することが重要でしょう。